プロジェクトの「目的」、社内で本当に揃っていますか

Webサイトのリニューアルが動き出すとき、たいてい最初に「目的」が語られます。採用を強化したい。新規顧客を増やしたい。ブランディングを強化したい。

キックオフの場で、こうした言葉が掲げられると、たいてい誰も反対しません。「そうだね、採用強化は大事だ」と、みんなが頷く。こうして、プロジェクトは順調に走り出したかに見えます。

でも、少し立ち止まって考えてみたいのです。その「採用強化」という言葉は、本当に、プロジェクトの目的として機能しているでしょうか。

もっともらしい言葉は、思考を止める

「採用強化」「新規顧客の獲得」「ブランディング強化」。これらの言葉には、共通する性質があります。掲げた瞬間、誰もが分かった気になれて、それ以上考えなくて済んでしまう、ということです。

会議で「今回の目的は採用強化です」と言えば、その場は収まります。反対する人はいません。でも、その「収まってしまう」ことこそが、落とし穴なのかもしれません。なぜなら、本当はそこからが、考えるべきことの始まりだからです。

「採用強化」という言葉は、実のところ、何も具体的なことを語っていません。なぜ採用を強化するのか。事業を伸ばすためなのか、欠員を埋めるためなのか、組織を若返らせたいのか。どんな人に来てほしいのか。今の会社にいない専門性を持つ人か、それとも、カルチャーに深く共感してくれる人か。これらの問いに、「採用強化」という言葉は、一つも答えていないのです。

なのに、答えたような気にさせてしまう。ここが、一番こわいところです。

同じ言葉を、みんな違う意味で使っている

さらに厄介なことがあります。もっともらしい言葉ほど、聞いた人それぞれが、勝手に自分の解釈で埋めてしまう、ということです。

「会社の魅力を伝える」という目的を掲げたとします。営業を担当している人は、商談で使える信頼感のことを思い浮かべているかもしれません。採用の担当者は、働く環境の魅力を考えているかもしれない。経営者は、事業の将来性を語りたいと思っているかもしれない。

全員が「魅力を伝える」に賛成しています。でも、頭の中で描いている「魅力」は、一人ひとり、まるで違う。抽象的な言葉は、賛成を得るのは簡単ですが、その裏で、全員が別々のものを見ているのです。

そして、この食い違いは、キックオフの時点では表面化しません。プロジェクトが進み、具体的な中身を決める段になって、初めて「あれ、思っていたのと違う」と噴き出してきます。手戻りが生まれ、関係者の間に、小さな亀裂が入っていきます。

一度、確かめてみてほしいこと

もし今、リニューアルのプロジェクトが動いているなら、試しにこんなことをしてみてください。

メンバー一人ひとりに、別々に、「このプロジェクトの目的は何だと思いますか」と聞いてみるのです。同じ答えが返ってくるでしょうか。それとも、微妙に、あるいは大きく、違うでしょうか。

「採用強化」と答えた人に、さらに聞いてみてください。「それは、どんな人を、なぜ採りたいということですか」と。「その採用がうまくいったと、何を見れば分かりますか」と。すらすらと答えが返ってくるなら、その目的は生きています。言葉に詰まるなら、その目的は、まだ形になっていないのかもしれません。

ズレを、なかったことにしない

誤解しないでほしいのですが、目的がズレていること自体は、悪いことではありません。むしろ、立場の違う人が集まれば、見ているものが違うのは、当たり前のことです。

大切なのは、そのズレを「ないこと」にしないことです。見えないズレは、消えてなくなるわけではありません。プロジェクトの後半まで潜んでいて、一番手戻りの痛いタイミングで、必ず表面化します。だとすれば、まだ何も動いていない最初のうちに、それぞれが思い描いているものを言葉にして、テーブルの上に並べておくほうがいい。

「私はこういう意味で捉えていた」「私はこう思っていた」。その違いを、最初に、見えるところに出しておく。それだけで、後の大きな遠回りの多くは、防げます。

目的は、「決める」より「揃える」

私たちは、プロジェクトの最初に、この「目的を揃える」ための対話に、たっぷりと時間をかけます。一見、遠回りに見えるかもしれません。早く中身を決めて、早く形にしたい。その気持ちも、よく分かります。

でも、目的がバラバラなまま走り出したプロジェクトは、進むほどに、少しずつ方向がずれていきます。そして気づいたときには、大きな手戻りになっている。逆に、最初に目的が本当に揃っていれば、その後の無数の判断が、驚くほどスムーズになります。「これは目的に合っているか」という、共通の物差しができるからです。

目的を「決める」ことは、簡単です。もっともらしい言葉を、一つ掲げればいい。でも、目的が本当に「揃っている」かを確かめることは、少し手間がかかります。その手間を惜しまないことが、実は、プロジェクト全体で一番の近道なのだと思います。

あなたのプロジェクトの目的は、みんなの中で、同じ絵になっているでしょうか。


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