そもそも、Webにはなにを書けばいいのか?Part.2

あなたのビジネスが書店で、なぜか両隣も同じく書店で、さらに店舗はまったく同じ大きさで、外から見える範囲の装飾は変更できないと制限されているとします。
書店だから値引きすることはできない(できたとしても利益を削って消耗するだけ)し、売っているのは本だから基本同じ「書籍」です。その三軒の書店の中で、あなたの本屋に入ってもらうにはどうすればいいんでしょうか。
あなたならどうしますか。

100人いたら100通り(たぶんもっと)の解決策があるので、特に「これが正解」という答えははありません。でも、ここでのテーマは「同じような店が並んでいる(そしてあなたの店はその一軒)としたら、あなたのお店を選ぶ理由はなんですか?」に応えること、さらにそれを文章で伝えることです。そう考えると書かなければならないことは自ずと見えてくる気がしませんか。

例えば、圧倒的に偏った品揃えであること(大手同士の戦いなら品揃えの豊富さで勝負してもいいでしょう)や、店主がものすごくあることに詳しい(〇〇愛に溢れすぎている)こと、スタッフが全員〇〇が趣味、リサイクルできないものは一切置いていないし電力も再生エネルギーで賄っている、売上の1%を毎年寄付している、毎年スタッフ全員で植林活動をしている、置いてある本はすべて表紙がグリーン、アフリカの国の本しか置いてないなどなど、あなたの店を選ぶ理由(差別化につながる要因)は考えてみるとたくさんあります。

安い、早い、美味いで勝負しない

この時に心に浮かぶ、みなさん共通の一抹の不安があります。「たくさんの人に共感して欲しいから、なんでもできて安くで親切だと言わないとお客さんが来ないんじゃないか」というものです。ビジネス用語でQCD(=安さ、早さ、美味さのこと)がすべて高くないと、競争に勝てないのでは?という不安です。確かに不安になりますよね、気持ちはわかります。でも、ここはグッと我慢して、自社の特長をしっかり考えましょう。「なんでもできます」は「特にこれといった特長はありません」と同じ意味で伝わってしまいます。なんでもできるなら、ヒト・モノ・カネがすべて揃った大手が強いに決まっているのです。

一番ダメだな(ごめんなさい)と思うのは、「がんばります、よろしくお願いします!」にしか見えない書き方です。よくあるのは「営業マンが心をこめて対応(=当たり前です)」とか「スピード対応!(当たり前です)」、さらには「柔軟な対応(=芯がないのでしょうか)」などの表現だと思っています。
これらの言葉をみると、あぁ、売りになるものがないから必死なんだなと思ってしまい「売れてませんオーラ」さえ感じてしまいます。

ここで大切なのは「すべての人にウケる必要はない」ということを理解しておくことです。自社のビジネスを考えた時に、自社の顧客になってくれて、長期的に関係を維持してくれて、お客様も自社もハッピーな関係でいられる、いわゆる「相性の良いお客様」っていらっしゃいますよね。そういうお客様が増えることが、自社にとって一番良いことだと思うのです(それはお客様にとっても一番いいことだと思われます)。
だから、誰にでも受け入れてもらえるようなことを考えず、自社の良さを理解して付き合ってくれるお客様にだけ響くことは何なのか、それをちゃんと考えて書いてみてください。

「そんな事言われてもウチのサービスには特に特長なんてない」とおっしゃる方、実はとても多いのですが、ではどうして現在のお客様は貴社を選んだのでしょうか。聞いてみればいいと思います。まずは現在のお客様とちゃんと対話すること、そこから自社のいいところ、悪いところを教えてもらうことから、Webサイト作りも始まると思います。

自社ビジネスの競争環境を正しく知ること、本当に顧客になって欲しいのはどんな人(企業)なのかをちゃんと知ること、そういう人(企業)が欲しいのはどんな情報なのかを考えること。こうやって並べてみると、とても当たり前のことに見えます。
なんとなくかっこいいキャッチフレーズを考えるより、本当に響くことはなんなのか、考えて、わからなければ聞きに行きましょう。貴社との取引で満足してくれているお客様であれば、喜んで教えてくれるはずです。

なんでこの商品・サービスを提供しているの?

さて、話がPart.1に戻ってしまいますが、ここまでに説明したようなことの他に、もう一つ大切なことがあります。それは「なぜ自分たちはこの商品・サービスを売っているのか」です。この理由を考えていくと、そもそも自分たちは何をしようとしてこの会社を運営している(または参加している)のかということに行きあたるはずです。
ただお金を稼ぎたいからやっているという人もいるとは思いますが、多くの人は何かを感じて、何かを変えようと思って、何かを実現したくなって、今の場所に居て、さらにはその方法の一つとして商品やサービスを提供しているのではないでしょうか。

入社したての人は難しいかもしれませんが、決定権のある人であれば、自分がやっていることの本質的な意味を考えたことがあると思います。経営者であればなおさらですね。
大切なのは「どう伝えれば顧客にウケるか」ではなく「本質的な価値をどう伝えるか」であることを忘れずに、創業の思いなどから紐解いて、今の商品やサービスまでの流れを考えてみましょう。この方法をとることで、自然に自社の特長を掴むことができます。

同じカレー屋さんでも、「スパイスが好きすぎて世界中を旅して研究した結果最高のカレーに辿り着き、それをみんなに食べてほしくて開業したカレー屋さん」と、「近所の大学生が安くお腹いっぱいに、毎日でも食べられるカレーを出してあげたいと思って始めたカレー屋さん」、そして「特にストーリーはないけどこの辺り(地域)なら学生も多いからそこそこ売れると思って開いたカレー屋さん」では、伝えるメッセージも、読んだ人、食べた人、食べた人から話を聞いた人に伝わる熱量は全然違うと思います。

自分が提供している商品やサービスだけでなく、自分はなぜここでその商品やサービスを売っているのかまで考えることで、より特長や個性、想いが伝わりやすくなり、たくさんの人に知ってもらえるチャンスも増えていきます。
自社ならどうするか、是非考えてみてください。