「言いにくいこと」を言える第三者の価値

「うちの会社の強みは何だろう」。それを決めるための会議を開いたのに、何度話し合っても、当たり障りのない言葉に落ち着いてしまう。品質、信頼、対応力、実績。どれも間違ってはいないけれど、どこかで聞いたことのある言葉ばかり。そんな経験は、ありませんか。

これは、参加した人の能力や熱意が足りないから起きることではありません。むしろ、その会社を誰よりもよく知っている、優秀な人たちが集まっているからこそ、起きてしまうことなのです。理由は、たった一つ。全員が、その会社の「内側」にいるからです。

内側にいると、見えなくなるもの

不思議なもので、人は自分が深く関わっているものほど、正確に見られなくなります。会社も、同じです。

内側にいる人たちの間には、いくつかの「見えない壁」があります。私たちは、第三者としてお客様の議論に加わる中で、その壁が、だいたい三つの層に分かれていると感じています。

一つ目は、「言いにくいこと」の壁です。

本当は、うすうす気づいている。でも、口に出せない。そういうことが、どんな会社にもあります。「実は、うちが長年誇ってきたあの強みは、もう競合と横並びになっているのでは」「この事業、そもそも市場のニーズ自体が、少しずつ減ってきているのでは」。

こういう問いは、内側の人間ほど言えません。長年その事業を育ててきた人がいる。過去の成功体験がある。部署の立場がある。誰かを否定することになるかもしれない。だから、みんなが薄々感じていても、会議のテーブルには乗らないまま、時間だけが過ぎていきます。

二つ目は、「当たり前すぎて、見えなくなっていること」の壁です。

これは一つ目と逆の方向の盲点です。自社では毎日やっている、ごく普通のこと。あまりに日常に溶け込んでいるので、誰もそれが価値だと気づいていない。

たとえば、専門知識のないお客様にも分かるよう、いつも噛み砕いて説明している。納期の連絡を、必ず一日前に入れている。そういう「うちでは当たり前」のことが、外から見ると、実は他社にはない立派な強みだったりします。でも内側にいると、「こんなの、当たり前でしょう」と、価値の棚から自分でおろしてしまうのです。

三つ目の壁は、少し厄介です

そして三つ目が、最も気づきにくい壁です。それは、「もう十分に調べた、と思い込んでいること」です。

たとえば、こんな会社があります。顧客のことを理解しようと、たくさんの人に話を聞いた。アンケートも取った。AIにまとめてもらい、きれいな分析レポートまで作った。数百人、あるいは千人の声が、整然と整理されている。
一見、完璧です。これだけ調べたのだから、顧客のことはもう分かったはずだ、と。

でも、ここに落とし穴があります。どれだけ多くの声を、どれだけ精緻に分析しても、それは「聞いた相手の中」でしか網羅できていません。そもそも聞かなかった人、来なくなってしまった顧客、まだ出会っていない未来の顧客。その「枠の外側」は、どんなに分析の精度を上げても、見えてこないのです。

そして本当に怖いのは、たくさん調べた人ほど、「まだ見えていない部分がある」という疑問を、感じなくなってしまうことです。数の多さと、分析の美しさが、かえって「これで全部だ」という安心を生んでしまう。疑問を持てなくなること。それこそが、一番の盲点なのかもしれません。

あなたの会議に、こう問える人はいますか

ここで、少しだけ考えてみてください。
あなたの会社の会議に、「それは、本当ですか?」と静かに聞ける人はいるでしょうか。

「昔からそうだから」を、一度立ち止まって疑える人は。「これだけ調べたんだから大丈夫」に、「調べていないのは、どんな人でしょうね」と返せる人は。誰かを責めるのではなく、でも確かに本質に触れる問いを、投げられる人は。

もし、思い当たる人がいないとしたら。それは、あなたの会社に足りないのが、新しいアイデアや、もっと多くのデータではなく、「問いを投げる、少し外側の視点」なのかもしれません。

ただし、外の人なら誰でもいい、わけではない

ここで、一つだけ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
「第三者を入れれば解決する」という単純な話では、決してありません。外部の人間なら誰でも本質を突ける、というのは、幻想です。

事業を深く理解しようとする姿勢のない人が、外から適当に「それは違う」と言っても、それはただの無責任な批評です。本当に価値のある第三者とは、その事業に敬意を持ち、内側の人たちの想いを理解した上で、それでも、必要な問いを、逃げずに口にできる人のことです。「言いにくいことを言う」のは、乱暴に否定することとは、まったく違います。むしろ、その会社を本気で良くしたいと願うからこそ、あえて言う。そういう関係の中でしか、本質的な問いは機能しません。

足りないのは、答えではなく、問いかもしれない

社内で議論が煮詰まったとき。私たちは、つい「もっといいアイデアはないか」「もっとデータを集めよう」と、答えの方を探しにいきがちです。
でも、本当に足りないのは、もう一つの答えではなく、「それ、本当ですか?」と問い返してくれる、誰かの存在なのかもしれません。

その問いは、外から来ることもあります。あるいは、あなたたち自身が、意識して一歩引いて、自分たちの「当たり前」を疑ってみることからも生まれます。大切なのは、誰かに頼むことそのものではなく、「自分たちは、まだ見えていないかもしれない」という、その一点を、忘れずにいることなのだと思います。

その謙虚さがある限り、答えは、きっと見つかります。もう、あなたたちの中に、あるはずだからです。


話はわかったけれど、できれば相談しながら進めたい。

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