データと数字の使い方(数字怖い)を考える

データ、あるととても便利だし、データを根拠に説明されると説得力もあり、誰かに自分の意見を理解してもらったり同意してもらうのにもとてもいい道具ですね。
しかし、データは使い方を誤ると質を見失ってしまう危険のある、取扱注意な相手であることを忘れないようにしましょう。なんとなく「だってデータではこう出ているから、こっちでいいんじゃない?」というような意思決定をすることは最も避けるべきことです。

お店が三軒並んでいたとして、前を通った100人のうち1人が一軒目に入り、他のお店には誰も入らなかった。これだけで、一軒目のお店は他の二軒のお店よりも優れているとか人気があると言えるでしょうか。

Webサイトであれば、例えばバナー広告を複数出していて、Aのバナーは1ヶ月間に1件だけ問い合わせにつながったのに対し、それ以外のバナーは1ヶ月に1件も問い合わせには繋がりませんでした。だからAのバナーが優れていると、本当に言えるでしょうか。

データから得られるのは過去に起きた事象そのものでしかない

ここで考えるべきことが二つあります。一つは、100人のうち1人が一軒目のお店に入ったという事実や、1ヶ月に1件だけ問い合わせに結びついたということが、果たして意味のある数字として捉えて良いのかということ。もう一つは、それ以外に、結果には結びついていなくても判断材料になるような特徴や変化はなかったのかということです。

前者から話します。100人のうち1人だけが一軒目のお店に入ったことは、それ自体にはあまり意味があるとは思えません。測定時間を伸ばして、三軒のお店にそれぞれある程度の人が入り、入っていく人の特徴を捉えることができる程度の数字が得られるまで続けるべきです。その上で初めて、それぞれのお店に入る人の特徴(人数、年齢層、キャラクター、などなど)も合わせて考えることで、特定のポイントにおいて一軒目のお店が優れているとか人気があるという判断ができるようになります。
「1」という数字だけで物事を判断するべきではありません。

また、1ヶ月に1件の問い合わせを獲得した広告の話では、1件という結果は事実ですが、それよりも「なぜ1件しか問い合わせが得られなかったのか」のほうが大切です。それを知るためには「問い合わせ」というゴールの数字だけでなく、Webサイトにたどり着いてくれた人が、どのような行動をしていたのかを詳しく分析するべきです。

もしかしたら、問い合わせしてみようかなと思った人はたくさんいたけれど「別に今じゃなくていい」という理由で問い合わせをしていないのかもしれません。
また、そもそも問い合わせしたいのに問い合わせがどこにあるのか見つけにくいとか、問い合わせの方法がめんどくさすぎてやめたという理由かもしれません。
さらには、本当に問い合わせしようなんて思っている人はいないのかもしれません(これとても重要)。
これらのことは、一定期間しっかりと数字を見ていくことでおおよそ判断ができるようになるはずです。

実は怖い平均

ところで、テレビで時々「美しいと言われている人の顔を集めて平均の顔を作ったらこうなりました」みたいな映像や写真が出てきたりしますよね。あれ、なぜかはわかりませんが、なんとなく個性がなくてなぜかちょっと怖い、体温を感じない顔になります。
そして、あの顔をみて「あっ、あいつにそっくりだ!」とか、遠い知人まで範囲を広げたとしてもなかなか思い浮かぶことはありませんよね。多分、誰の知り合いにもああいう顔の人はいないんだという気がします。

実は、平均ってとっても怖いんです。
よくマーケティングリサーチをしてその結果を見ながら「ウチのお客様はみんなこんなことを考えているのかー」なんていう感想を聞くんですが、ちょっと待ってください。正しくは「うちのお客様になりそうな人の中には、比較的こういうことを考えている人が多い」だけであって、実際にその平均値にぴったりの人物は「たぶん一人もいない」なのです。
だから、「よし、ペルソナを作るぞ!」などと言ってマーケティングリサーチで浮かび上がった人物像をもとにペルソナを作ってみたりしても、うまくいくわけがありません(そういうペルソナを私たちは「都合のよいペルソナ」と呼んでいます)。

平均怖いですね。平均は正義に見えてしまうし、それでもう正解のように思えてくる恐ろしい数字です。本当に気をつけていただきたいです、平均には。
実際に私たちの仕事でも、10,000人のアンケートから見えてきた平均値や傾向よりも、たった6人の実在の人に直接話を聞いた(利害関係者は同席せずに)インタビュー内容をもとに設計したほうが成果が出たという経験が何度もあります。

たくさんの人の意見を聞くのは大切ですが、それを「たくさんの人」という集合で見てはいけないのです、5人なら「1人×5」と考えられるのに、10,000人になると「1人×10,000」であることを忘れて10,000という集合を見てしまうのです。「10,000人のうち6,000人が赤がいいって言ってるんだから赤だよ」とか。
その6,000人はそもそも買わない人で、本当に買う人は残りの4,000人の中にほとんど含まれているかもしれないのに。
本当によく見かけるのでこれを読んだ方はご注意を。

数字を見るときには「意味を持つデータと言えるのか」を考えて

データは事実、数字は正しく強い、それは事実です。それでもまずは「そのデータが本当に意味をもつのか」を判断する必要があることを忘れないようにしましょう。たくさんのWebサイト制作現場で、数字の判断ができないために迷走したり間違った方向に進みそうになるプロジェクトを見てきた私たちからのお願いです。

どうしても自分じゃ無理だ、もしくは社内を通せないから助けて!と思った方は私たちのチームにご相談ください。ちょっとしたアドバイスでもお役に立てるかもしれません。