コーポレートサイトの設計を進める「プライオリティ」の話

BtoB企業のコーポレートサイトリニューアルにおいて、プロジェクトの初期に必ずと言っていいほど活発な議論になるテーマがあります。
「今回のリニューアルは、新規顧客の獲得(マーケティング)を重視したい」 「いや、優秀な人材を確保するために、採用(HR)に力を入れるべきだ」 「上場企業として、株主や投資家への情報開示(IR)の格を高めるのが先決ではないか」
株主、取引先、求職者、そして既存の顧客。コーポレートサイトは、あまりにも多くの異なる「立場や期待を持つ人々」を同時に迎え入れなければならない空間です。

ここで全ての要望を等しく受け止め、トップページに全ての入り口を均等に並べてしまうケースは少なくありません。すべての要素を等しく扱えれば、社内の合意はスムーズかもしれません。しかし、すべての要素を同じように扱おうとすると、結果として設計の軸がぼやけてしまい、誰にとっても最大公約数の情報しか載っていない、伝わらない空間になりがちです。

多くの人々が混在するWebサイトで真に成果を上げるためには、上流の戦略設計において「プライオリティ(優先順位)」をどのように定義するかが極めて重要になります。

まずは、漏れなくすべてを机の上に並べる

情報設計におけるプライオリティを決める際、私たちは最初から選択肢を絞るべきではないと考えています。大事な視点を見落とす(漏れが出る)原因になるからです。製品が複数ある場合も、事業が複数ある場合も同様です。まずは全てを一度、机の上に出し切ることが大切です。

その上で、書き出したすべてに対して、以下のように「訪れる人とその目的(サイトを通じてどうなって欲しいか)」をセットにして定義し、1から5までのプライオリティを定めていきます。

  • プライオリティ1:まだ見ぬ顧客 ➔ 自社の提供価値を正しく理解し、他社との違いを納得して問い合わせしてほしい
  • プライオリティ2:既存の顧客 ➔ 自社の新しい事業や取り組みを知り、さらに深いパートナーシップを感じてほしい
  • プライオリティ3:求職者(新卒・中途) ➔ 表面的な条件ではなく、ビジネスの実態と高い思想に共感して応募してほしい
  • プライオリティ4:社内の社員(インナー) ➔ 自社の強みと未来の方向性に誇りを持ち、日々の実務のスタンスを同期させてほしい
  • プライオリティ5:株主・投資家 ➔ 短期的な数字だけでなく、経営思想の健全性を信じて中長期で応援してほしい

具体的に「その人にどうなって欲しいか」を目的とセットにするからこそ、「いま、Webサイトという空間を組み立てる上で、何から順番に考えていくべきか」という、設計プロセスのロードマップが初めてロジカルに定まります。

プライオリティとは、見た目の話ではなく「設計のプロセス」である

ここで誤解されやすいのは、プライオリティを「1から5まで決める」ということは、出来上がったWebサイトのすべての箇所(画面の広さや目立たせ方)に、その順番をそのまま適用するということではない、という点です。

これはあくまで、「Webサイトを構築していく上で、1番から順に設計に落とし込んでいく」という、設計をしていくときのプライオリティだと考えてもらえると分かりやすいと思います。

実際に出来上がったWebサイトを見て、他の誰かが「これはこういうプライオリティで作られているな」と、見た目や動線だけで気づくことはあまりありません。なぜなら、完成したWebサイトは、事前に定めたプライオリティに従って、すべての要素を美しく、かつ破綻なく設計しきった「結果」そのものだからです。

建築家が、10年後、20年後の「暮らし」を問う理由

家を建てるときに、本当に良い建築家は依頼主に「どんな家(間取りやデザイン)がいいか」ではなく、「どんな暮らしをしたいか」を聞くと思います。それも、「今」の暮らしだけでなく、「5年後、10年後、20年後、30年後」の未来の暮らしについても、深く耳を傾けるはずです。
外観や間取りといった表面的な要望をただ並べるだけでは、長い年月の変化を支える住まいにはなりません。未来まで含めたすべてを深く理解した上で、必要な箇所に必要な工夫や余白を取り入れるからこそ、依頼主の変化し続ける暮らしを、長い間快適に支えられる家が完成します。

Webサイトを設計するプロセスも、家ほどスパンは長くはないかもしれませんが、本質的には全く同じだと私たちは考えています。
5年前に作ったサイトが今と合わなくなってきたとき、あるいは競合が台頭する中で改めて新時代の旗を立てたいとき。今、目の前にある要望(パーツ)をただ並べるだけのパッチワークでは、変化を支えるインフラにはなり得ません。

訪れるすべての人々と、企業の「今と少し先の未来」をすべて漏れなく机の上に置き、プライオリティに沿って、1つひとつ丁寧に必要な箇所に必要な工夫を落とし込んでいく。
この上流における「設計のプロセス」にどこまで誠実に向き合えるか。それこそが、結果として顧客からも、求職者からも、社内からも深く、長く信頼され続けるWebサイトをつくるための、唯一の解なのです。


話はわかったけれど、できれば相談しながら進めたい。

ためになりそうな記事は読んだけど、実際に進めるにあたり全体の流れがわからない。
できれば自社に合わせて具体的なアドバイスが欲しい、手伝って欲しいなど、
状況に合わせてサポートをいたします。お気軽にご相談ください。