「平均的なお客様」は、存在しないという話

Webサイトを作るとき、どんな顧客に向けて作るのかを考えます。ペルソナと呼ばれる顧客像を、チームで作ることも多いと思います。

今回は、そのペルソナづくりで起きがちな、少し不思議な現象について書きます。ペルソナを作るのをやめましょうという話ではなく、真面目に作ったはずの顧客像が、なぜか誰にも当てはまらないものになってしまう理由と、その避け方の話です。

真面目に作るほど、「誰でもない人」ができあがる

ペルソナづくりは、たいていの場合チームで集まり、付箋にアイデアを書き出し、「否定は禁止」のルールで自由に広げて、最後にまとめるという進め方です。
ところが、この正しい進め方が、不思議な結果を生みます。

ブレインストーミングに近い意見だし会議では一般的な「否定禁止」のルールは、アイデアを出す段階では正しく機能します。問題は、まとめる段階です。否定禁止のまままとめようとすると、全員が頷ける要素だけを残して人物像を作ることになります。誰かが出した尖った観察——「あのお客様、決め手は社長の一言だったらしい」——は、全員が頷けるわけではないので、残りません。残るのは「30代、情報感度が高い、品質を重視」のような、みんなが同意できる要素だけです。

こうして、誰でもあって、誰でもない「あらゆる点で中間にいる人」ができあがります。

さらに、そこには「こういう人に買ってほしい」という願望も混ざります。私たちはこれを、都合のよいペルソナと呼んでいます。観察ではなく期待でできた人物像は、反論の材料がなく、みんなで作ったので否定もしにくい。そのまま、プロジェクトの中心に据えられていきます。

存在しない人には、何も届かない

平均的な顧客像の何が問題なのでしょうか。それは、その平均にぴったり当てはまる人が、実際には一人も存在しないことです。

実在する顧客は、一人ひとり、平均像とは違う場所にいます。ある人は価格で悩んでいて、ある人は社内の説得に困っていて、ある人は前の取引先への不満から探し始めている。「品質を重視する30代」という像は、この全員をぼんやり含んでいますが、誰の実際の状況とも一致しません。存在しない人に向けて書かれた言葉は、実在する誰の心にも、ぴったりとは届かないのです。

顧客の傾向を知ること自体には、意味があります。どんな層に使われているかを掴むのは大切なことです。ただ、傾向は集団についての情報で、一人の顧客が本当に求めていることとは、別の情報です。傾向だけを材料にして一人の人物を合成しようとすると、存在しない人ができあがってしまうのです。

想像する代わりに、実在した一人から始める

そこで、人物像を合成する代わりに、実在した一人から始めることを提案したいのです。

実際にいた、あのお客様。あの人はなぜ、うちを選んでくれたのか。何に困っていて、どうやってうちを見つけて、最後は何が決め手だったのか。実在の一人は、平均像より範囲は狭いですが、確実に存在します。そして、その一人に本当に響いたものは、同じ状況にいる別の誰かにも響きます。

私たちがWebサイトを作るときも、たくさんの声を集めることよりも、実際のお客様に直接会って話を聞くことを常に優先しています。可能であれば実際のユーザー数名——多くても6人ほど——に集まってもらい、自由に会話してもらうこともあります。質問への回答には出てこない話が、ユーザー同士の雑談の中では自然に出てきます。「そうそう、あれ困りますよね」という何気ない一言に、心の中にあったものが現れます。人数は少なくても、そこから掘り出せるものは、大量のアンケート結果よりずっと深い気がするのです。

存在しない人に売り込まなくていいように

もし手元にペルソナの資料があったら、開いて、一つだけ問いかけてみてください。
「この人と同じ人に、実際に会ったことがあるだろうか」

会ったことがあるなら、そのペルソナは実在に根ざしています。思い浮かばないなら、その人物像は、願望と平均でできているのかもしれません。そう気づけたら、次にやることは決まっています。資料を作り直すことではなく、実在のお客様に、会いに行くことです。


話はわかったけれど、できれば相談しながら進めたい。

ためになりそうな記事は読んだけど、実際に進めるにあたり全体の流れがわからない。
できれば自社に合わせて具体的なアドバイスが欲しい、手伝って欲しいなど、
状況に合わせてサポートをいたします。お気軽にご相談ください。