「成功したリニューアル」とは、何をもって言えるのでしょうか

Webサイトをリニューアルして数ヶ月が経つ頃、経営会議などでこう聞かれることがあります。「それで、効果はどうなの?」

担当者は報告できる数字を探します。アクセス数は少し増えた。問い合わせもわずかに上向いた。その数字を持って報告しながら、どこかで思うのです。これで「成功した」と言っていいのだろうか、と。
この、もやもやとした引っかかり。実は、とても大切なものを指し示しています。

人は、手に入る数字で判断してしまう

「効果はどうか」と聞かれたとき、私たちは手元にある数字を見ます。アクセス数、問い合わせ件数、コンバージョン率。Webサイトの管理画面を開けば、すぐに出てくる数字たちです。これらが悪いわけではありません。ただ、ここには静かな落とし穴があります。「すぐに見られる数字」と「本当に見るべき数字」は、必ずしも同じではないということです。

なぜ「すぐに見られる数字」ばかりを追ってしまうのか。その理由をたどると、数字の問題ではなくもっと構造的なところに行き着きます。多くの会社でWebサイトは、マーケティングや広報の担当者が中心になって作ります。ごく自然なことです。しかしそうすると、追える数字も自然とその担当者の範囲に閉じてしまう。アクセス、問い合わせ、資料ダウンロード。ここまでは視界に入ります。けれど、その問い合わせが営業にとって意味のある商談につながったのか、さらにその先で売上や利益にどう影響したのか。そうした数字は部署が違うために、そもそも「見えない」のです。見ないのではありません。見ることができない。組織の壁が、見える数字を縛っているのです。

そして、その縛られた視界の中だけで、「成功したか、しなかったか」が判断されてしまう。アクセスが増えたから成功だ、と。でも、そのアクセスが、事業にとって意味のある何かに本当につながっているのかは、誰も確かめていない。

ここで一度、根本に立ち返ってみたいのです。Webサイトは、マーケティング部門の持ち物なのでしょうか。私たちは、そうではないと考えています。コーポレートサイトなら、それは「会社全体」のものです。一つの事業のためのサイトなら、「その事業全体」のもの。Webサイトは、その全体の顔であり、その全体のために働く投資です。だとすれば、その成否も一部門の視点ではなく、その「全体」の視点で定義されるべきなのです。

何を成功とするかを、最初に決めておくことの大切さ

では、どうすればいいのか。答えは、シンプルです。Webサイトを作る最初の段階で、「私たちは、何をもって成功とするのか」を、部署を越えて話し合って決めておくことです。

見るべき指標は、いくつもの層に分かれています。アクセスなどWebサイト自体の数字。問い合わせや資料請求といった、Web上での行動の数字。そこから営業に手渡せる有望な見込み客の数。さらに、実際の商談につながった数。そして売上や利益の変化。あるいは、顧客が自社をどう見ているか、その意識の変化。これらのどれをどこまで追いかけるのか。それは、会社や事業の状況、そしてリニューアルの目的によって変わります。

ここで大切なのは、目指す成果は必ずしもすぐ数字に表れるものでなくてもいい ということです。たとえば、採用のためのサイトをしっかり設計して作れば、説明会に来る人や応募者はかなりはっきりと増えます。短期間で成果が数字にはっきり現れる。これは一つの立派な成功の形です。一方でこんな会社もあります。目先の数字ではなく、「これからの会社がどんな人と出会っていきたいか」という未来の姿を掲げて、サイト全体を作り直したのです。掲げたのは数値目標ではありませんでした。結果として、毎年の応募者数には波がありました。短期的にはうまくいっていないように見える年もあった。けれど、出会う人、応募してくる人の顔ぶれが年を追うごとに、確かに少しずつ変わっていったのです。これは数字ではなかなか捉えられない、けれどその会社にとっては何より本質的な成果でした。

どちらが優れている、という話ではありません。すぐ数字に出る成功も、時間をかけて会社の体質が変わっていく成功も、どちらも本物の成功です。大切なのは、自分たちはどちらの成功を目指すのかを、あらかじめはっきりと決めておくこと。それが決まっていないと、短期の数字の波に揺さぶられて、本当は長い目で見るべき取り組みを途中でやめてしまったりするのです。

そして、この「何を成功とするか」を決められるのは、やはりその全体を見て意思決定ができる人です。先ほどの未来の姿を掲げた会社では、その方針を役員全員が集まって承認していました。これはとても大きな意味を持っていたと思います。もし、その目標が担当者だけで決めたものだったら、短期的に数字が出ない年に、「この取り組みは失敗だ」と判断されて、途中で消えていたかもしれません。会社として腹を括って決めたからこそ、目先の波に流されず、長い成功にたどり着けたのです。作り始める前に、関わるべき人たちが集まって「私たちは、これをもって成功と呼ぼう」と目線を合わせておく。この最初のひと手間が、公開した後の「マーケティングの数字しか見られない」という壁も、「短期の数字に一喜一憂して、本筋を見失う」という迷いも防いでくれます。

数字にならない変化もある

Webサイトのリニューアルが成功したかどうか。その答えは、アクセス解析の画面の中だけには収まりきりません。

営業の現場で「詳しくはサイトを見ておいてください」と、自信を持って言えるようになった。商談の最初の説明がぐっと楽になった。出会う人が、少しずつ望んでいた方へ変わってきた。こうした変化はすぐには数字になりません。でも、これこそがその事業にとっての、本当の成果だったりします。

数字を追うことは大切です。追うべきです。ただ、追う前に考えてみてほしいのです。その数字は私たちの目的にとって、本当に見るべきものだろうか。そして、その「成功の形」を私たちは会社として、事業として、みんなで決めただろうか と。

Webサイトへの投資を、何をもって「成功」と呼ぶのか。それを決めることは、実はその事業が何を大切にし、これからどこへ向かうのかを決めることでもあるのだと思います。


話はわかったけれど、できれば相談しながら進めたい。

ためになりそうな記事は読んだけど、実際に進めるにあたり全体の流れがわからない。
できれば自社に合わせて具体的なアドバイスが欲しい、手伝って欲しいなど、
状況に合わせてサポートをいたします。お気軽にご相談ください。